裏 イベント116帰還SS

裏 イベント116帰還SS

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砂漠地帯の乾いた風が吹くレンジャー連邦東都空港に、1機の燕が40メートルある全長を感じさせない優雅をもって滑走路へと滑り込む。
ラスターチカ、通称燕姫は、MEIDEA2を元にレンジャー連邦が開発した新型の航空機で、ステルスの必要のない塗装は砂漠の白、海の青を模し、大気圏を脱する速度をたたき出せるエンジンと、大気を切り裂くシャープなフォルムは美しいと評されていた。

「奇襲部隊に行ったのが帰って来たか」

レンジャー連邦空軍の若き開発主任が連絡を受け、自分の担当した燕姫の帰還に足を速める。
殆ど寝る事も出来ず、若くて元気だけが取り柄のテストパイロットに脱出ポットテストをやらせ、極限に短い時間で造り上げた我が姫君。それが宇宙から帰ってきたのだ。

彼が急ぎ滑走路に到着した時には、搭乗していたパイロットとコパイロットが設置したタラップから降りてくる所だった。

「ドラケンさん、お疲れ様です!」

声をあげ、手を大きく振る。
揃いのパイロットスーツを着込んだ小さい方の影がそれに気付いたのか、こちらを見てパイロットを務めた男の腕を引いたのが見える。
隣に立つ立派な体格の男性の側にいるととても小さく見えるが、彼女は燕姫の設計を担当した本人。今回はコパイロットとして自ら機体に乗り込み宇宙へと行っていたのだ。
この国特有の銀の髪を邪魔にならない様一つにまとめ、生真面目そうな雰囲気の漂う細いシルバーピンクのフレームの眼鏡をかけた、ごく普通の女性であったが、開発に当り怒濤の勢いで上がってくる摂政からの仕様書と、それに添えられた彼女が引いた図面に舌を巻いたのは記憶にも新しい。

「むつきさんお帰りなさいー」

既に迎えに来ていたお腹の大きい同僚の女性が彼女に声をかけると、満面の笑顔。

「わー!サクさん! ただいま帰りましたー」

そう言いながらタラップを危なっかしくかけ降りて、きゃーとかにゃーとか言いながらハグする姿にどうにもギャップを感じて、なんだかなあ、と彼は自身の頬を指でかいた。
彼女の後から地面に降り立ったパイロットの方はというと、この国に無い金の髪と肌の色、白を基調とした連邦のパイロットスーツの胸ポケットに薄い色素の目を守るサングラスをかけ、疲れを感じさせない落ち着いた様子であったが、二人の女性の様子を見守る姿は優し気で彼は思わず顔を引きつらせる。

カール・瀧野・ドラケンと、むつき・萩野・ドラケンは、その名の示す通り夫婦であり、レンジャー連邦のパイロット同士である。
特にドラケン(夫)はここ空軍に所属し、そのパイロットとしての腕と空を制する撃墜王の名に憧れを持つ者は少なくは無く、もちろん開発主任である彼もその中の一人で…。

(奥さんと一緒なのが、嬉しいのか…)

普段の厳くも頼もしい姿しか見たことが無かったが、あんな顔もするのかと、少しばかり、いや結構男心にジェラシー。
周りを見れば、自分と同じようにげんにょりと苦い顔をしている幾人かの同僚達、彼らは一様に肩を落としていた。

「そうだ、カール、このフライトデータは誰に渡せばいいの?」

ふと、奥さんの方の声に自分がここに来たもう一つの理由を思い出して我に返る。

「ああ、それは開発主任…先程手を振っていた彼に」

「了解」

ドラケンに示され、彼女がこちらへ歩いてくる。彼は反射的に背筋を伸ばし敬礼をして前へ、何はともあれこの人も地位的には上司である事には変わらなかった。
彼女も余り様になってはいなかったが同じく敬礼。

「あなたが、開発主任を務めて下さった方ですね。随分と急がせてしまって、すみませんでした。ですが、おかげでラスターチカは完成し、命を乗せるに相応しい機体となって存在できたのは、組み立ててくれた人達のお陰だと思っています。ありがとうございました。」

そう言って彼女は頭を下げ、手にしていたケースを彼に手渡した。

「それには今回採集した敵艦と、参戦した他国機体の戦闘データが入っています、どうか役にたてて下さいね。」

「イエス、マム。感謝致します」

常に新しい知識と情報を知ることはエンジニアには重要なことで。ここ連邦の空軍施設にも学習するためのライブラリはあるが、戦場でのリアルデータは他のパイロット国家に比べると多いとは言えない。
これは嬉しいお土産だ、と笑みを浮かべれば彼女もにこりと笑う。
データを受け取り再び敬礼、そうして引渡しが終ったところで、こちらを見ていたドラケンが口を開いた。

「出ている間色々話をしたのだが、ラスターチカの改修をするかもしれない」

「改修ですか?」

「ああ、この姫君はまだ良くなれるからな、その時は自分が引き継ごうと思う」

どこか楽しそうに機体を見上げる姿に頷く、確かにまだまだ改善の余地がある、そう思うからだ。
一方彼女の方はというと、足りなかった時間と自分のエンジニアとしての未熟さが悔しいのか、

「本当は、もっとちゃんと手をかけたげたかったの…」

残念そうに呟くと、若き開発主任に敬礼を返してからしおしおと夫の元へ、ドラケンはそんな自分の妻に苦笑すると声をかける。
遮るもののない滑走路に吹き付ける風が強くなってきたせいか、その内容はこちらにまで聞こえて来なかったが、彼女がぱっと顔を上げて嬉しそうに笑って頷き、その夫である彼も笑みを浮かべて頷いていた。

ドラケンは仲間達の方を向くと「又明日に」と完璧な敬礼をして踵を返すと、彼女と迎えに来ていた女性をエスコートしながら空軍施設に向かう。

「お疲れさまでした!」

データの入ったケースを大事に抱えた若き開発主任と、その場にいた者も敬礼。
青く青く澄んだレンジャー連邦の空の下、輝く燕姫の向こうへ消える空の王とそのパートナーの背中を見送ると、我が姫君をハンガーに格納する為、慌ただしく動き出したのだった。

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http://82789969.at.webry.info/200807/article_3.html

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